卒業生に贈る言葉(平成22年度学位伝達式告辞より)
前医学研究科長・医学部長

安田 和則(52期)
 

 北海道大学医学部87期の皆さん、卒業おめでとう。

 近年、医療を取り巻く社会はますます複雑化しており、また医師に対する社会の眼には極めて厳しいものがあります。医師たる者の本質は不変であり、社会の風潮に流されるものではありません。しかし、だからこそ、その医師の「心」というものが問われております。医師たる者は、病める人の心の痛みを深く理解し包容できる大きな心、そしてどのような状況にも動じない静かな心を持たねばなりません。皆さんはこの6年間に培った自らの「心」に基づいて、医師として行動してください。

 医学の道を歩む者は、一生、勉学を続けなければなりません。それは自分の富や名誉のためにするのではありません。病める人々、皆さんの治療を受ける人々のために勉強するのです。真の医師に必要な能力は、自らの常識的思考を疑うことのできる批判力と、正解がない問題に対して解答を与えることができる応用力です。皆さんがこれらを身につけるためには、然るべき時期の卒後研修を大学病院で行なうことを強く勧めます。

 皆さんの将来の使命について、一言申し上げます。開学以来90年の星霜を越えて続いてきた北海道大学医学部の変わらぬ使命は、次世代を担う優れた基礎および臨床医学研究者や日本の医療をリードできる臨床指導医を育てることです。今、その北海道大学医学部を卒業する皆さんに国民が負託する使命は、「次世代を担う基礎および臨床医学研究者」や「日本の医療を様々な形でリードできる臨床指導医」になることです。それが6年前、皆さんが難関に挑戦したことの意味であり、それを突破して入学したことの責任なのです。世界最高と評価される現在の日本の医療は、時代を超えてこの使命を果たしてきた多くの先輩によって営々と築かれてきたものです。皆さんはこれから、この使命を果たしている多くの先輩に出会い、指導を受け、そして立派な医師に育っていくでしょう。その次は皆さんの番です。将来、皆さんがこの使命を果たしてください。

 皆さんは自分が思っている以上に優れた資質を持ち、無限の可能性を秘めています。自分の将来に夢を持ってください。卒後研修では、10年先、20年先の自分の夢を見据えて、その実現の準備をしてください。夢を追ってこそ、人生は豊かで充実したものになります。私がこれまで学生諸君に贈り続けてきたジェームズ・アレンの言葉を、今日も皆さんに贈りたいと思います。

 「気高い夢を見ることだ。あなたは、あなたが夢見た者になるだろう。あなたの夢は、やがてあなたが何になるかを示す予言である。」

 今後、皆さんが医師として、研究者として、そして何よりも人間として大きく発展することを心から祈ります。

(告辞の全文は北海道大学医学部ホームページに掲載)

 

 
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