北海道大学医学研究科・医学部図書館の竣工について
医学研究科長・医学部長
安田 和則(52期)
 

 旧医学部図書館は昭和45年に北海道大学医学部同窓会の寄附などで建設され、医学部の知の拠点の役割を果たしてきましたが、近年、その低耐震性と老朽化が問題の一つでありました。またこの40年間に、図書館に対するニーズも大きく変化しました。従来の図書館には、蔵書機能、閲覧機能、検索機能、貸出機能、調査編集機能などが求められておりました。しかし、昨今はインターネットの普及によってほとんど全ての文献はインターネットを介して研究室で検索・閲覧するようになり、図書館を利用する研究者数は激減し、貸出する本の数も低下しました。一方、学生の勉強の仕方も変化し、図書館には自習室としての機能が強く求められるようになりました。さらに北海道大学医学部学生の教育環境全体に目を向けますと、最近、授業・実習を行う環境が著しく劣化しており、その対策も急務でありました。特に第一・第二講堂の老朽化、試験や実習を行う第五講堂の不足、近い将来に見込まれる学生数の増加に対する総ての講堂の狭隘化などは緊急の課題でありました。この度の旧医学部図書館の耐震補強と内部改修は単なる改修ではなく、これらの問題に総合的に対処するための計画の一部と位置づけることができます。このような背景の下、北海道大学医学研究科・医学部図書館は本来の図書館機能を損なうことなく、現在の学生・研究者のニーズにも応え、さらに学生の教育環境の改善にも質する施設として8月13日に竣工しました。

 北海道大学医学研究科図書館の概要を紹介します。1階に入り、玄関ホールを抜けて進むと左手に受付カウンターがあり、正面の書庫には効率的収納が可能な移動式書架を導入して12万5千冊の書籍を収容しています。書庫から戻ると受付の右隣には複写室があり、受付の前を進むとここにも書架があり、その隣に閲覧・自習室があります。またこの空間の一角には7台の検索端末PCが設置されています。このように1階は、主として研究者・学生の閲覧、検索、貸出スペースにあてられています。必要十分な大きさにした図書事務室は受付カウンターの奥にあります。2階には書架を有する広い閲覧・自習室があり、また学生のインターネットを介する情報アクセスを支援するため、40台のPCを備えた学生用IT室があって、学生の勉学を支援しています。また多目的室やラウンジを備えており、学生や研究者が勉学に励む一方でくつろぎも取れる快適な空間となっています。なお2階の一角には男女ロッカー室ができました。3階には、今までの第一・第二講堂の面積の約1.4倍の基礎講義室が2つできました。また、学生用のアメニティホールも用意されています。図書館2階と南棟は渡り廊下で連結され、医歯学総合研究棟の実習室と講義室を結ぶ学生の勉学導線は大幅に短縮され、天候に左右されない快適なものになりました。

 北海道大学医学研究科・医学部図書館3階に基礎講義室を造ることの必要性に関しては、ここでもう一度補足説明をさせていただきます。一般論として、学生の講義室を改修するためには、講義を中断しないための工夫が必要です。学生の講義室の改修に関する現在および今後の医学研究科の計画は、医学部創立90周年事業として同窓会から寄贈していただける学友会館建設と動的にリンクしたものです。第一・第二講堂の学生の講義を中断なく続けるために、図書館3階に120人を楽に収容できる2つの基礎講義室を造りました。第一・第二講堂の学生はまもなくここに移ります。これによって従来の図書館の3階にあって管理機能と教育機能を発揮していた大会義室と特別会議室が失われますが、この機能は来年の春に完成する学友会館の大会義室とセミナー室へ発展的に引き継がれます。特に後者は第五講堂としての役割も担うことになります。現在も狭隘な第三・第四講堂は近い将来に改修が必要になりますが、このセミナー室は現在の臨床大講堂とともに、その時の代替講義室になる予定です。そして学友会館の新大講堂は現在の臨床大講堂に代わって、入学式、卒業式、学生研究発表会などの学生行事やフラテ祭などの同窓会行事が行われることになります。もちろん学会・研究会にも使用可能です。このように学生の教育環境の改善に大きく貢献していただける同窓会の医学部創立90周年事業に改めて感謝を申し上げます。

 このようにして完成した北海道大学医学研究科・医学部新図書館は北大図書館本館および北図書館とリンクして従来の図書館の機能を保有しつつ、現在の医学生に充実した教育・学習環境を与える新しい概念の図書館として、今後の医学教育・研究の重要な拠点になることが期待されます。

 
<<<戻る

 
Copyrught(c) Hokkaido University Medical School Alumni Association.