本間 研一
 就任挨拶
病院長
浅香 正博(48期)
 

 このたび宮坂和男先生の後任として、北海道大学病院長の重責をになうことになりました。もとより力不足のことは本人が一番承知しておりますので、同窓会の皆様方のお力添えをよろしくお願い申し上げます。北海道大学病院は956床の入院ベッドを有し、 500 余名の医師を含む 1600 人以上の医療関係者が働いている巨大な複合施設であります。北海道民の健康を守る大きな砦としてこれまでは順調な歩みを進めておりましたが、平成 16 年度より実施されました独立法人化と新医師卒後臨床研修制度の影響を受け、現在はきわめて厳しい状況下に置かれております。問題点は病院経営と人員不足に集約できると思います。国立大学が法人化されたとき、文部科学省は経営改善係数を設定し、前年の国立大学病院収入の 2 %の経営改善を義務づけました。これが、大変な重みとなって国立大学病院の経営戦略を惑わせております。北大病院は昨年約 200 億円の収入を上げましたが、今年はさらに 4 億円の増収を要求されることになりました。これに加えて医療費が 3.16 %下げられたことにより、実質 10 億円もの増収が科せられたことになります。定員増なしにこの目標を達成することは不可能ですが、逆に北大全体に定員削減の通知がきているのです。赤字になった場合、国からの補填処置は一切ありません。したがって、収入増につながる各診療科の努力と同時に支出を減らすために、材料費や薬剤費の節約に努めなければならなくなりました。

 一方、新医師卒後臨床研修制度が発足してから卒後臨床研修を大学病院で行う研修医は年々減り続け、平成 18 年度は全国集計でとうとう 50 %を切ってしまいました。端的に言うと症例を多く診察でき、かつ給料の高い市中病院に研修医の多くが集まっていったと考えられます。北大病院においても平成 16 年度には 103 名いた前期研修医が 18 年度には 59 名と半減しております。後期研修医の減少も明らかとなった今、各診療科は生き残りをかけて、大学病院で診療できる医師を確保しようと試み、そのため地域病院に派遣される医師がますます足りなくなってきているように思われます。

 したがって、このまま手をこまねいていれば、国立大学病院は診療に従事する医師数は減少し、経営どころではなくなって大学病院の最も重要な役割である高度先進医療ができなくなり、そのための基礎研究もストップする事態が生じかねません。

   このような厳しい状況の中、北海道大学病院の進路をどのように取っていけばよいのか日夜模索を続けております。大変な時期ではありますが、各診療科の医師、看護師、薬剤師、事務部の方々などの連携を深めて北海道大学病院の究極の目標である個々の患者さんにとっての最適な医療の提供を目指して努力していく所存でございますので、同窓会の会員の皆様のご協力をいただければ幸いに存じます。
 
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