齋藤 和雄
  北大(特に医学部)に求められているもの −法人化後1年を過ぎて−
国立大学法人北海道大学理事・副学長
井上 芳郎 (会員2)
 

  平成16年4月から実施された国立大学の法人化は明治の帝国大学令、戦後の新制大学制度に続く第3の国立大学の制度改革であった。法人格を持ったことから運営主体は文部科学省から大学そのものになり、総長が主宰する役員会(総長、理事7名と監事2名)で大学全体としての運営に係る事項を協議し、外部委員が参加する経営協議会と部局長等からなる教育研究評議会の審議を経て役員会で最終決定し執行することとなる。各学部・研究科等部局の運営は教授会を中心に行われることについては従来通りである。しかし、この法人化が行政改革の一貫としても位置づけられていることから財政的な面からの縮減が求められており、部局の運営方法については国立大学時代のままとはいかない状況である。
<教員数の削減と附属病院経営>
 法人化後の運営の中でもっとも厳しい条件は人件費を含めて国から交付される運営費交付金に縮減の効率化係数を毎年掛けられ(毎年3.5億円位)、一方、病院では毎年2%の経営改善係数(3.9億円位でその分の運営費交付金が縮減される)が課せられることである。平成21年度で終了する今期中期計画期間中の各部局における人件費削減の基本方針を部局長等連絡会議に示したところであるが、医学研究科及び歯学研究科における人件費の削減は教育研究体制に大きく影響を与えるだけでなく、附属病院の運営にも直接影響を与えることから、附属病院が持つべき機能を維持するための方策を検討することが喫緊の課題である。病院長は副理事として本学役員会に参画しており、病院の意志決定機関である病院執行会議には役員会の学外理事が参画し、また、私のもとに病院執行部と担当理事や事務局幹部からなる北大病院連絡調整会議を設けて、大学として病院運営に関わる体制になっている。人件費・物件費が病院の裁量で運用できるように制度を変えており、国立大学時代の病院運営から大きく変革しつつあることを病院構成員全員が自覚し、意識改革を行って取り組まなければならない時に来ている。
<教育研究における競争的資金の獲得>
 先に述べたように、毎年、運営費交付金に対して効率化係数が掛けられることになったが、その削減分は競争的な資金として概算要求による特別教育研究経費や国公私大学の区別がない競争による教育研究経費にあてることになっている。本学は特別教育研究経費として平成16年度には15億6千万円を獲得した。また、後者の資金としては公募型教育プログラムの実施に平成16年度は約7千万円を獲得している。この経費は原則として申請して採択された部局に配分され、採択された期間中は申請内容に沿った教員の採用も可能になる。平成17年6月13日に「新時代の大学院教育−国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて」という題で中央教育審議会の中間報告がなされた。この報告書の基本的な考え方は、@大学院教育課程の組織的展開の強化、A国際的な通用性及び信頼性の向上、の2点にある。医学研究科における博士課程の大学院教育は卒後臨床研修の義務化に伴う入学希望者の減少や教員の削減など厳しい状況の到来が予想されるが、今後、この報告書に沿った文部科学省の政策が展開されることになり、これらの競争的資金を獲得するためにも、各分野間で連携した斬新な教育或いは研究プログラムの提案が必要になる。従って、大学院に係る国の施策について情報を集め、公募申請のアイディアを常に研究し、準備しておくことが肝要である。
  国立大学時代において各分野に配当されていた経費(いわゆる講座費)もまた圧縮された。従って、研究に係る経費は各自が科学研究費をはじめとする競争的資金を獲得しなければならない状況である。平成18年度からの第3期科学技術基本計画は現在策定中であるが、「人材」戦略、「基礎研究」戦略、「イノベーション」戦略、「基幹技術」戦略、「国際」戦略の「5つの戦略」のもとで様々な施策が展開される図式になっている。従来の重点4分野(ライフサイエンス、ナノテクノロジー・材料、情報通信、環境)には変更はないがさらに重点領域に絞り込みを行うとあり、研究費を組織的にまた各自が獲得する上でも科学技術政策を考慮した取り組みが必要である。
<北海道大学連合同窓会からのお願い>
  最後にお願いを1つ。本学では平成17年度に既存の各部局の15同窓会と国内の23地区同窓会を組織的に一元化して北海道大学連合同窓会を立ち上げた。斎藤和雄医学部同窓会長は連合同窓会の副会長に就任している。事業の一つとして、同窓生の方々に北海道大学カード(UC CARD)に入会していただき、会員が買い物等によって支払う金額の一部が連合同窓会に還付される制度を利用して、学生支援を行うことにしている。是非、ご入会いただき、日常の買い物等を通じて学生の支援をお願いする次第です。問い合わせは本学事務局広報室(011-706-2610)まで。

 
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