齋藤 和雄
  生命科学の世紀を迎えて

会長  田邊達三(30期)
 

  年頭にあたり会員の皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。記念すべき世紀の幕開けとなりました初春を、皆様には新たな抱負や希望を胸にされて、お迎えのことと拝察いたします。

 多事多難な状況が伝えられる最近の世相のなかで、21世紀について多くの展望や予測が話題となり、医学、医療の将来像も取り上げられました。振り返って20世紀では理工学分野を中心に自然科学と技術が飛躍的に進展し、医学、医療はその恩恵を受けて急速な発展がみられました。かつて主要テーマでした感染症、麻酔、栄養などはほぼ解決され、科学技術の進歩を応用した画期的な診断法、治療法の普及によって診療は大きく変貌し、医療にもビッグバンが続きました。こうして20世紀は医学発展の世紀であったと言われるなかで、私どもは医学、医療を実践できる幸福に恵まれ、またわが国は世界一の豊かな長寿国となりました。最近、科学技術をさらに推進するため、5年間の基本計画が発表されましたが、生命科学、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の四分野が重点課題となっています。いずれも医学、医療と深く関わっており、さらなる進展とその応用が図られることになります。

 さて21世紀を予測することはむずかしい状況ですが、実現の確実性が高いのは、生命科学とバイオ、情報科学とコンピューターであり、驚くべき進展がみられるとされています。興味深い予測も多い反面、人類の存亡にも係わる深刻な課題も挙げられています。生命科学によって人為的に創生される物質は多様化される反面、同一化された生命体も作られ、未知の生命分野が拡がるといいます。情報科学の分野でも進歩は加速化され、情報過多のなかで利便性一辺倒の機械化された生活様式が想像されています。そして21世紀半ばには考える人、ホモ・サピエンスの存続も懸念される予測も出てきています。

 新世紀の将来について明暗両論がみられるなかで、深刻化する生命問題では、生命を扱う専門集団の医師が果たすべき役割は一層大きくなるとみられます。これからの同窓会活動においても、母校の先端的な学術活動を支援して医学の発展を期待しながら、密な親睦活動のなかで会員が生命倫理などの問題について、プロとして選択枝を示す役割も期待されることでしょう。不透明で複雑な時代が予測されるなかで、専門に係わる科学技術、医療問題とともに、会員が有識者として幅広い素養や人間性を磨き、社会の協調や融和を図る場として同窓会活動を充実させていくことも必要と思われます。会員皆様の一層のご理解とご尽力を大いに期待いたします。

 新世紀の年頭にあたり医学、医療を中心に将来を考えてみました。末筆になりましたが、会員皆様のますますご発展とご多幸を祈念申し上げます。

 
<<<戻る

 
Copyrught(c) Hokkaido University Medical School Alumni Association.